晴海通り 17​:​00

by kengomatsui

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about

[セルフライナーノーツ]
東京都心の南東方面の道路事情に明るくない方(ほとんどの方が当てはまるだろう。当たり前だ)には説明が必要だが、晴海通りというのは東京都千代田区の日比谷あたりから、江東区東雲までを走る幹線道路で、銀座〜築地〜勝鬨といったエリアを通り抜けていく、場所にも寄るが片側4車線ほどもあるような大きな道路だ。普通乗用車だけでなく、バス、タクシー、トラック(終点の東雲周辺は湾岸エリアで倉庫や配送拠点や首都高速の入口がある)など多くの車が切れ目なく走っている。

僕の現在の住まいの場所柄、晴海通りは身近な道路であり、高層ビルを背に車の行き交う情景が、このアルバムの借景となっており、各トラックがそれぞれイメージの場所と時刻をタイトルに設定されている。基本的にはテクノ/エレクトロニカを基調とした(かなり広い意味での)シティ/アーバンポップス/AORを志向している(テクノ/エレクトロニカ自体が通常シティ/アーバンでしかありえないが)。ミドルグルーヴで、アーバンで、ポップスと電子楽器・電子ノイズがそれぞれを引き立て、ノイズもまたポップに響く、ということがアルバムの楽曲上のコンセプトである。

シティポップスに類するような音楽がここ数年でまた大きく注目されているが、70年代以降のオリジナルシティポップスや80年代クリスタルな時代からそうであるように、そこに描かれるような街など現実にはどこにも存在しない。こうした幻想の街への憧れ、逃避とも言える感性が再び多くの人の心に響くというのは、おそらくはそれだけ今の現実世界が厳しいものになっていたり先のない感覚が通奏低音として共有されていたりするのだと思う。それが今作でも軽佻浮薄な浮遊感や耳なじみのよいスタイルとして表出している。

楽曲ごとの説明は以下に記す。


1.Intro - 晴海通り 17:00 (2011)
イントロダクションとなるタイトルトラック。夕暮れの空の下、晴海通りを流れる車の流れはメロウを呼び込む。


2.蔵前橋 2:00 (2011)
蔵前橋は隅田川にかかる橋で、両国と浅草の間くらいにある。隅田川は左岸(リヴ・ゴーシュだ(笑)。要するに川の東側といいたいだけだ)に首都高速の高架が並走しており、夜の川と高速の街路灯が続いて行く光景には深夜の都市特有の妖しさと哀愁と美しさがある。


3.湾岸線 18:00 (2012)
「湾岸線」という言葉は、イナタさを伴ったアーバンフィーリングとセットで存在する。右には都心のビル群、左には東京湾だ。キラキラして、少しダサくて、うっとりするようなあれだ。マイナーキーのポップスだが、僕の主宰するパーティ、collectiveの常連でもあるベーシストのK.Nakadaiさんのベースがとりわけファンキーですばらしい。パープルのポルシェが隣を追い越して行く。


4.東京駅 0:00 (2012)
深夜の東京駅。最終の新幹線が滑らかにホームに入り、やがて一日の終わりへと向かう。丸の内や八重洲のビルの明かり、人のいない東京駅舎の空気。
ここまでの曲がベーシックなコード進行理論(ダイアトニック)に基づいていたのに対して、この曲では一部にモードの概念や分数コードを大きく取り入れることで、夜の、都会の、大人の浮遊するムードを表現している。


5.羽田 5:00 (2009)
いわずもがなの東京の空の玄関口、羽田空港の明け方。アルバム中最も古いトラック。このトラックのコンセプトがアルバムの種となっている。ミドルテンポと美しい電子音フレーズにノイズが生き物のように絡み付いて姿を変えながら進んでいく。ノイズが複雑に動き回るのでバックトラックは非常にシンプルに作られている。ノイズの為に他パートがあると言っても過言ではない。透明な朝焼けの中のノイズ。


6.浜離宮 6:00 (2011)
浜離宮恩賜庭園は、隅田川河口の汐留付近にある江戸時代の庭園で、東京都に下賜された庭園である。それこそネット上の写真などで見て頂くとわかるが、日本庭園の背後に汐留の高層ビル群が立ち並び、日本庭園と現代のビルが共存する光景は独特である。
楽曲的にはシンセにノイズが引っ掻き傷を付けるような上モノと、パーカッションによるリズムで構成され、リズム隊は4拍子と3拍子のポリリズムである(ただし4拍子成分が強く出るように作ってある)のでその辺りのリズムの妙もお楽しみいただけたらと思う。後半の演説は、キューバのフィデル・カストロの演説をYouTubeからサンプリングしたもので(スペイン語だから何をしゃべっているのかまったくわかっていない(笑)多分共産主義の話だろうが)、これはキューバ音楽に関するレクチャーで刺激を受けたことからポリリズム概念とともに使用させて頂いた。キューバ政府の耳には届かないことを祈るばかりだ(笑・届く訳もないが)。


2010年に住まいを東京に移し、3年弱がたった。このアルバムにはその街に対する、うっとりしながらもぞっとするような愛憎の入り混じる気持ちの過程が刻まれているだろう。この音楽たちが都市住民たる皆様の部屋や移動のBGMとして楽しんで頂けることを願っている。


2012年12月30日 東京にて
Kengo Matsui

credits

released December 31, 2012

All tracks performed and produced by kengo matsui
Except Tr.2 & 3 bass by K.Nakadai

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about

kengo matsui Caraway, Arkansas

大阪南森町の、古い蔵をリノベーションした和み空間"雲州堂"にて、ソウル、ディープハウスからテクノ、エレクトロニカまで緩急のグルーヴをDJとライブでお届けするデイパーティ、"collective"の主宰兼ライブアクト/トラックメイカー。アーバン・メロウ・スムースをキーワードに音楽制作。

音楽理論を菊地成孔氏に師事。氏の私塾ペンギン音楽大学大学院ブラックミュージッククラス(モダンポリリズム、現代ブラックミュージック)を2015年に卒業。

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